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宮島から飛んできた大蛇


むかし、八百年も前(一一八〇年)、大原の里が秋の終わりごろ、羅漢山(錦町大原
一一〇九b)の空が急に真っ赤になって、大きな車の輪のような光が現れたそうな。
それは神様の光、ご神光といって空を通る時、大嵐が起こり、羅漢山のまわりはゴー
ゴーと気味の悪い音を立ててゆれ動き、滝のような雨が降り出し、神様の光を荒れ
狂う黒雲が包み、唸りながら北の方へ飛んで行ったそうじゃ。そして不思議なことに
羅漢山の西の山に落ちたそうな。びっくり仰天して村人たちはみんな家の中に閉じ
こもってふるえていたそうじゃ。
しばらくして静かになったのでそろっと戸を開けて外に出てみたら、風雨は止み、空
は晴れ、山の中ごろに怪しい光の固まりが、赤々と輝いていたそうじゃ。
「ありゃあなんじゃろうか。赤い火の玉が光りよるが。」
恐る恐る山の中ごろへんにかけよって見ると、まわりは生臭い匂いが一杯して、後
の大きな岩に、一匹の大蛇が巻きついてスヤスヤと眠っていたそうじゃ。
それから何十回となく宮島様の方から、毎晩「龍灯(りゅうとう)」(神様の光)が飛ん
で来てはその大岩の上で燃え続けていたそうじゃ。その大岩には貝やのりなど、海
のものが一杯こびりついているので、村の人たちは、「こりゃあ、厳島大明神がこの
大原の地に影向(えこう)なされたにちがいない。」と言い始め、それからこの地を
「島影向か谷(しまかげむかだに)」と呼んでいたが、いつの間にか「島の谷」と呼ぶ
ようになったそうじゃ。またこの山全体が生臭かったので「なまぐさ山」と言いよった
が、いつの間にか「生山(なまやま)」と呼ばれるようになったそうじゃ。
その後、島の谷明神社を建て、厳島神社から神様を移していただき、後の大岩には
大きな縄を巻きつけて、「龍まきの神事」というお祭りを続けているのじゃそうな。

(参考文献: 錦ふるさと散歩  山口県錦町観光協会)

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