江戸の食文化
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壱
「江戸流行 料理通大全」 八百善主人 文政五壬午年二月 | ||
書林 尾州名古屋本町 永楽都東四郎 | ||
江戸田○町 鶴屋金助 | ||
同中橋廣小路町 西 宮弥兵衛 | ||
同芝神名町 和泉屋市兵衛 | ||
此処に二冊の料理本がある。明治六年出生の祖父の書棚を整理して出てきたものである。 | ||
爺は、樽酒を一升枡で飲むほどであるからして、木石ならざる身であったのか、粋な人だったのか、それにしても | ||
洒落た本を持っていたものである。数ヶ月前のこと"料理本か"とうっちゃっていた。最近、吉原と川柳について調 | ||
べていたところ、食事のことに関してこの本を手に取ってみると、文中に新吉原の図絵があり、小さく屋号が書い | ||
てある建物が目に飛び込んできた。 | ||
それは八百善(やおぜん)であった。 | ||
新吉原と八百善は割りと近い距離にあり、「遊廓と料亭」、なにか結び付かないかと読んではみたものの、あくま | ||
でも料理についてのみ記されているのであった。 | ||
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◇江戸の料理本について調べてみると、 | ||
● 『料理物語』 著者・出版者不詳 寛永20(1643) | ||
● 『豆腐百珍(とうふひゃくちん)』 正・続篇 何必醇編 大阪 藤屋善七 天明2(1782)-3(1783) | ||
● 『大根一式料理秘密箱』 著者不記 京都 西村市郎右衛門[ほか] 天明5(1785) | ||
● 『甘藷百珍(いもひゃくちん)』 珍古樓主人編著 出版地・出版者不明 寛政1(1789) | ||
● 『新撰包丁梯(しんせんほうちょうかけはし)』 杉野駁華著 大阪 浅野弥兵衛[ほか] 享和3(1803) | ||
● 『料理通(江戸流行料理通)』 初編〜4 編 八百善著 江戸 和泉屋市兵衛 文政5(1822)- 天保6(1835) | ||
等があり、末行に爺のあの『料理通(江戸流行料理通)』があることを知り少々驚きであった。 | ||
『料理通(江戸流行料理通)』について | ||
江戸の有名な料理屋 「八百善」四代目主人の手による。八百善料理本として書き出された初編と2編は四季に | ||
分け、本膳、精進献立、江戸卓袱料理、極秘伝之部、料理心得の部に分けて書かれている。 | ||
三編は精進料理を中心に、四編は卓袱料理の特集となっている。 | ||
初編には見返しに酒井抱一の蛤の絵、亀田鵬斎、大田南畝の序文、谷文晁の蔬菜図、大窪詩仏の五言絶句、 | ||
葛飾北斎の挿絵、北尾正美後の鍬形恵斎の山谷附近の図絵と八百善亭の図絵がある。 | ||
と紹介されている。 |